――

『あの事故で、あんたにとっては邪魔者は消え・・・やっと好きな相手と一緒になれる、そう思ったとこかも知れないけれど・・・おれは認めないからな。智がいたら・・・もしも、あいつが生きてたら、絶対そう思ったに決まってる。あいつ一人にあんなに辛い思いをさせて、その上で幸せになろうだなんて、おれが絶対認めないからなっ！』
・・・

兄キが・・・
智兄ちゃんが・・・
祥子おばちゃんに、そんな思いをもってたなんて知らなかった。
おじちゃんには、他に付き合ってる人がいて・・・
つまりは、それは”不倫”ってコトなんだけど・・・
智兄ちゃんは、子供の時からそれを知っていて・・・

あんまりに――
ひどい話だって私も思う。
でも・・・
私の心にいるのは今でも、優しかった智兄ちゃん。
浩平の事。私たちの事。
祥子おばちゃんやおじちゃんの分まで、支えようとしていた智兄ちゃん。
・・・
ただ、悲しく思うのは――
もしも・・・
智兄ちゃんやおじちゃんがいなくなってしまう前に、私がこの事を聞いてたら――
自分に一体、何が出来たんだろうか・・・ってコト。
――



copyright （C）2002-2004 kchoco All rights reserved.
photo by AQRA of "HITONOINAI MACHIKADO".
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　click